世良心療内科クリニック

小樽市の心療内科、精神科 世良心療内科クリニック

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コラム

baby step

マイケルの帽子

マイケルの帽子をもっている。
マイケル、who?って、あのマイケル・ジャクソンです!!
去年の6月に不慮の死を遂げたキングオブポップ。

あれは今から何年前?
ともかく、マイケルジャクソンが初来日し、コンサートをするというので、
日本中が沸きに沸いていた時。
ついこないだのワールドカップと同じで、にわかファンが急増し、
マスコミは連日のようにマイケル訪日予定を報じ、若い子向けの雑誌では、
一足先にLA(エルエー。ロサンゼルスをそんなふうに呼ぶようになったの
も、この頃?)
にでかけ、ライブの模様をレポートするなんていう企画が、あっちこっちで
試みられてた。
中では集英社の「セブンティーン」の記事がいちばん面白かった。
そのころ、私は女性誌で映画記事なんか書いていたから、編集者たちが
ガンガン盛り上がってるのにつきあって、「あぁ、私も見てみたぁい」
とやってたにすぎない。

そして、マイケルがやってきた。

東京の会場は後楽園。
まだ、ドームじゃなくて、ゲートから、暗い廊下を通ってスタジアムに出る
と、
一気に緑の芝と夜空にきらめくカクテル光線がとびこんできて。
息を呑むほど美しかったの、今でも覚えている。
天気は良好、季節はいつだったのか、夜風が気持ちよかった。
コンザート開始まではまだたっぷり1時間以上はあるというのに、
みんな興奮していて、濃い群青の夜空に、人々のざわめきが
ひろがってゆく。
やっぱ、とりあえず流行ものは押さえておかないと・・・。
軽いひやかしまじりの観客をも、どきどき落ち着かない気分にさせる空気が、
その夜の後楽園には、確かにあった。

そして、マイケル!!
彼は漆黒の闇から登場し、あっというまにすべてを支配した。
その一挙手一投足に、文字通り、息をのんだ。釘付け。放心。
コンサートが終わったときには、完璧にマイケル熱にうかされていた。
はるか後方のスタンド席で、私は連れの編集者に訴えていた。
「ね、ね、チケットもっと手に入らない?どんな席でもいいから!」

マスコミの連中には独自のルートがあって、なんだかどっかから
手に入らないチケットっていうがひょいと回ってきたりすることがある。
その時も、まさに、そうだった。
「すごいですよ。喜んでください!」
後楽園3日目の夜。アリーナ中央、前列から10番目!!
信じられないようなプラチナチケットが、手に入った。

し、しえ~~~っ!!
前回は豆粒みたいだったマイケルが、今度は肉眼でばっちり見れるぞ!!
いや、肉眼でなんてなまやさしいものじゃなかった。
なんたったって、ビートイットだかなんだったかで
(興奮してよく覚えていないのです!!)
地獄の魔王のように黒い風に煽られて、クレーンで舞いあがった彼は、
なんと、今にも手の届きそうな私のすぐ頭上数十センチの上を舞っていったの
だ!!
ぎゃぁぁぁぁ~~~っ!!!!!

そして、あの忘れられない瞬間がやってきた。

ビリージーン!
間奏に入るとステージの照明が消えた。
一筋のピンスポットのなか、おなじみのポーズで静止、
シルエットになったマイケルは、左手でスッっと帽子を頭からはずすと、
右手で魔法をかけるようにして・・・・客席に向けて帽子を放った。
しゅるるるる~~~。帽子は鮮やかな弧を描き、そして・・・・。

あ~~~っ、くる?!!
私はどれほどジャンプしたんだろう?
気がついたときには、私はマイケルの投げた帽子を胸にしっかと抱えていた。
絶叫と羨望のため息のなか、気づくと、私は屈強なボディガードに
両脇をかためられていた。
「落ち着いて!あんまり騒ぐと返してもらいますからね」
きゃぁ~~~、だめ~~~。はなさない~~っ。
「だいじょうぶですね?気をつけてくださいよ」
四方から伸びていた手も、彼らがはらってくれたのか?
「わぁ、すごおい!!」
見知らぬ誰彼の声に大きくうなずきながら、私は帽子に顔をうずめ、
思いっきり息を吸った。
「いやぁん、どんなにおい??」
「一瞬でいいんで、私にもかがしてもらえます??」
マイケルの帽子は、つかの間、あたりの人の手と鼻先を巡回した!

あとのことはあまり覚えていない。
ただ、ライブの終わったステージで、高く組まれた照明が、
最後帯電するように、弱い稲妻のように横に走ったのが、
いかにも、名残り惜しくて、幸せなのに悲しいような
不思議な感覚だったのを、覚えている。

黒いフェルトに黒いリボン、内側のテープには金色の印字で
Michel Jacksonと入ったマイケルの中折れソフト帽は、
ちょっぴり甘くてなんともいえないいい香りだった。

スーパースターの帽子をキャッチしたというので、
編集者は大騒ぎ。
すかさず「ノンノ」という雑誌にライブレポートを書くことになった。
“本誌記者が見事キャッチ!”みたいなダサい見出しがついたのには、
ちょっち泣いたけど(^^)

さて、で、本題はここから!!

思わぬマイケル特集を組めたご褒美(?)に、編集部が
マイケルのディズニーランド貸し切り取材の記者証をとってくれた。
取材?んなもん、もはや名目のみですがな。

少しでもいい位置をとるように予定時間の2時間前には
舞浜に到着していた私。
でも、各社ともカメラマンっていうのは、すごい。
彼らは早朝からず~~っと張っていて、マイケルが登場予定の
左側一帯はもう脚立がずらり立ち並び、すでに何重にもカメラの列が。
その前には長いロープが張られ、2メートル置きに背広姿の係員が配置。
私は仕方なく、右手のブロックのロープ最前列に陣取り、今か今かと
マイケルの到着を待ち受ける。
が、いっかな、主役は現れない。なにせもうたっぷり数時間は
待ってるもんだから、係員もいいかげん飽きてきて。
「本当にくるのかしら」「どこらへんから入ってくるのかなぁ」
なんて私たちのつぶやきにちょいちょい反応しはじめ。
しまいには「「その帽子どうしたんですか?」なんて
むこうから聞いてきたりして。
みんなして微妙な一体感につつまれたころ、突如、はるか彼方で
悲鳴とも絶叫ともつかない声があがった。
と思ったら、左のブロックがフラッシュの洪水になった。
バシャバシャバシャバシャバシャ。

そうして、ついにマイケルが現れた。

私からの距離は、3メートル?20メートル?
あぁ、むこうで黒いサングラス姿のマイケルが手を振っている。
そして、そのまま、ゆっくりパーク内に向かおうとしている。

「どうしよう!行っちゃう~!!こっち来な~い!!」
すると、係員が一言。
「叫んでみたらどうですか?」
「え~~、そんなぁ、声出ない~!!」
事実、心臓がバクバクして、かすれ声しかでなかった。
「大丈夫ですよ。ほら。早く」

意を決して、思いっきり、叫んだ私。
「マイコ~~~!!」
そう、かの雑誌「セブンティーン」では、
外人はマイケルをマイコーと呼ぶのだと書いてあった。

かすれ声どころか、私の声は馬鹿みたいに
ディズニーランドの夜に響き渡った!!
すると、なんと、園内に向かいかけていたマイケルが、
つと立ち止まり、くるりこちらを振り返った。

「マイコ~、ジスイズユアハット!!!!」
マイケルの帽子を必死にふる私。
と、なんと、マイケルがこちらにやってくるではないか??
ウッソ~~っ!
ついに、マイケルが私の目の前にきて、立ち止まる。
なにか、彼の口が動いた気もするが、定かではない。
ともかく、彼は私の手にした帽子に手を伸ばし、
私の渡したサインペンで帽子の内側にサインをした。
しかけた。
が、その時、私の後ろの報道陣がどどっと雪崩をうった。
マイケルは反射的に飛びのいた。
ロープがお腹にくいこみ、雪崩の下敷きになりそうになりながらも、
私は見逃さなかった。
いまや、数メートルの彼方に遠のいて行こうとしているマイケルが、
手にしたサインペンをいったいどうしたものかと、
ちらと周囲を見やったことを。

「マイコー、イッツマイペ~~ン!!」

すかさず絶叫する私。すると、あろうことか、マイケルは
なんとそのペンを返しに、再び、私のもとへと戻ってきてくれたのだ!
その一瞬、握手もした。
が、カメラマンがさらに激しく殺到し、またもや後ずさったマイケルは、
取り巻きに囲まれたまま、エイズニーランドの奥へと消えていってしまった。

近年は奇行とスキャンダルばかりが世界の耳目を集めたマイケルだったけれ
ど。
私にとってのマイケルは、伝説のスーパースターでもキングオブポップでもな
く、
“わざわざペンを返しに戻ってきてくれた人”なのだった。

七夕。そしてお盆。
日本の夏は、出会いと別れに思いをはせ、亡き人をしのぶ季節でもある。
東京ではこの6年間ずっと、織姫と彦星は逢うことができないままでいるけれ
ど。

はたして、私たちは、愛する人に逢うことができるのか?
思いのたけを伝えることはできるのか?

亡き人をしのびつつ、蒸し暑い夏の夜はすぎていく。

誰かの胸に残る、ささやかな記憶が、
明日への小さな希望となることを祈ってー。

作家
: 正本ノン
プロフィール
   
星座
: 水瓶座
血液型
: A 型

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第2・第4・第5土曜日、日曜日、祝日

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