世良心療内科クリニック

小樽市の心療内科、精神科 世良心療内科クリニック

  • TEL:0134-24-4556
  • FAX:0134-24-2556

コラム

baby step

日々の祈り

目が覚めると、世界は一変している。
お布団の中から見上げる天井も、窓も、隅々まできっちり片付いた部屋も、
みんな妙に改まった感じで静まり返っていて、いきなりちょっとよそいき顔だ。
あたりを包む空気の冷たささえもなんだか特別に思え。
―――って、昔のお正月はそんなじゃなかったでしたっけ?

やれ大掃除だなんだとつい直前までバタバタしっぱなしだったのに、
夕刻6時をすぎるころにはみんなちゃんとお風呂にも入って、
家族そろって年越しそばをいただきながら、コタツで紅白歌合戦を見る態勢にはいる。
いつも9時には「寝なさい」と強制撤収(?)されていた子供たちには、
夜遅くまで起きていてもいいというだけで、大みそかは特別な日になる。
初めのうちは、絶対12時まで起きていて、新年を迎えてから寝るんだ!
と頑張っているのだけど、いつのまにかまぶたはひっついてて。
気がついたら、お布団のなかで、もうとっくに朝はあけている。
新しい年がきている。

「どうして起こしてくれなかったのぉ!!」
まだ眠い目をこすりながら、台所へいって、
お雑煮の支度をしている母親に文句をいう。
冷いやり冬の冷気のただよう台所は、もわもわ湯気があがり
おいしそうな匂いがいっぱいだ。、
「起こしたけど、起きなかったんでしょ?それより早く着替えて
きなさい」
ガス台のお餅をひっくりかえしながら、母がちらとこちらを見る。
「顔洗ったの?ちゃんと挨拶しなさいよ」
「ふわぁい」
口を尖らして、部屋にもどると、枕元には新しいセーターとスカート、
タイツがおかれている。
もちろん、下着も昨日お風呂のあと着替えた、真新しいやつだ。

お正月の朝の食卓には、御節の詰まったお重や、
いつもは見たことのない
きれいな食器が並んでいる。
1年に一回、この日だけ着物姿の父の前には、おちょこと徳利。
母と私たち子供には、オレンジジュース。
「あけまして、おめでとう」
父が居住まいを正して言う。
「おめでとうございます」
わたしたちも、ちゃんと正座したまま、軽く頭をさげる。
「本年もよろしくお願いします」
親がすっかりあらたまっているから、私たちもそれっぽくするけど、
どこか芝居っぽくてくすぐったい気持ちもあって、
私と弟はこっそり肘をつつきあったりする。
やがて、父がおもむろに懐に手を入れる。
「さぁ、じゃ、ふたりにはお年玉を」
わぁ~~い!!

って、なんか、まるで、
向田邦子の新春ドラマスペシャルの一コマみたいじゃあ~りませんか?!
でも、正真正銘、私たちの子供のころのお正月はこんなだった。
昭和30年代。
・・・今から、もうかれこれ50年、半世紀も前の話だ!
本当に羽子板で羽根つきをしたり、凧をあげたり、コマをまわして遊んだ。
三が日(元旦から三日までを特別にそう呼ぶのです)
店という店はすべて閉まっていて、町は本当に静かだった。

掃き清められた道路。門松。
家の前に出て遊んでいても、通る人はまばらだった。
初詣以外、元旦は出かけず、家族ですごすものだった。

開けて二日。
ようやく人々は、親せきや上司の家に年始まわりにでかける。
我が家では、毎年、この日、欠かせない行事があった。
おとなりの家とのかるた大会だ。
かるたといっても、百人一首。
そう、和歌の上の句を読んで、下の句をとるというあれです。
たとえば”久方の光のどけき春の日に”と、読みあげられたら、
“静こころなく 花の散るらん”という札をとる。
つまり、その歌を暗記していないと、札はとれないわけで、
ちょっとばかり教養がいる。

というわけで、家族対抗戦には、両家のささやかなメンツがかかっているのだ。
おとなりには、ちょうどうちと同い年くらいの兄妹がいて、
それも対抗心に火をつけるにはもってこいだ。
かくして、戦いはなかなかに熱を帯びる。

百人一首は二手にわかれ、互いの前に50枚ずつ札を並べる。
札の順番は自由だけれど、縦横きちんと列を作って置く。
相手方の札を1枚とったら、自分の陣地の札を相手に1枚渡す。
こうすると、どちらが優勢がすぐ見て取れる。

もちろん、私たち子供はろくに和歌などおぼえていない。
ただ、百人一首には1枚札というのがあって、たとえば”ほ”ではじまる歌は、
“ほととぎす なきつるかたをながむれば ただありあけの月ぞ残れる”しかない。
つまり、読み手が”ほ”といった段階で、”ただ”をとればいいのだ。
そんな1枚札が、全部で7枚。
む、す、め、ふ、さ、ほ、せ。
自陣の50枚の中に、1枚札があると、親がそれを私たちの前においてくれる。
「いいか、”め”っていったら、コレだぞ。”せ”といったら、コレな」
父が小声で教える。
隣家は隣家で、
「いい?キリギリスといったら、これだよ。こっちは”乙女”だからね」
と、声を潜めて教えている
私たちは、互いにそんな相手の札をちらちら上目づかいにみやりながらも
正座した膝に両手をついて、ひたすら、目の前の札に集中する。
「め、め、せ、せ」
小さく心の中でつぶやきながら、ひたすら見張っているのに、いざ
となったら、
「ほらっ、のりこっ!」
と、名前を呼ばれるまで気づかなくて、結局、相手方に取られてしまったり!
自分の札(のつもり^^)をとられると、悔しくて、大騒ぎ。
相手の札をとると、得意満面で大はしゃぎ。
わあわぁきゃぁきゃぁ、熱戦は1度では終わらず、たっぷり半日は繰り返される。
読み手が変てこな節をつけて、札をよみあげるのも、
なんだか可笑しいけど”特別”で、お正月にふさわしかった。

実は今でも、毎年、知人宅で、年に一回、かるた会をやる。
12,3人のメンバーが集まって、2人一組となり、勝負はほぼ丸一日がかり。
5回から6回戦は戦う。
実力は伯仲。だから、誰と組むことになるかが、大きく勝敗を左右する。
一時はパートナーが誰であれ10連勝を重ね、
かるたクイーンとまで呼ばれた私だったのに、
この2,3年は2位の座に甘んじている。・・・・。悔しい!!
勝敗とは別に、好きな札を相手方に取られると、
思わず悶絶してしまうのは、幼いころとまるで同じだ。
“かくとだに えやはいぶきのさしも草 さしもしらじな もゆるおもいを”
この札をとられると、叫ばずにはいられない!
「もうっ!!、好きだったのにぃ!!」
だが、ふと気づいた。これ、私が好きというより、
今は亡き父が好きな札だったこと・・・。

気がつけば、1月もはや半ばすぎ。
昔は”お屠蘇気分”なんていって、いつまでも、お正月気分がぬけなくて
だらだらのんびりしていたもんだけれど。
最近は、お正月もたいして特別なものではなくなってしまった。
朝おきたら、何もかもが新しい気がした・・・なんてこともなくなった。
誕生日とお正月、
年に2回くらいしか新しい洋服を買ってもらえなかったなんて時代と、今は違う。
よそゆきと普段着、なんていっても、なんですか、それ?ってなもんだろう。
コンビニは、元日からあいてるし。

でも、いいもんです。
一日寝たら、昨日はもう去年で、今朝は新しい年って。

去年の大みそか、まもなく紅白歌合戦がはじまろうって時刻、私は風呂上りで、
最後に出た洗濯物を乾かしに、近くのコインランドリーにいた。
店にはほかに、だれもいない。
8台ある洗濯機はすべて赤いゼロの表示を光らせ、外を行く人の姿も
もはやほとんどない。
やけに明るさだけが目立つ小さなコインランドリーで、
ボワッボワオと一人乾燥機をまわしていると、
なんだか世界から見捨てられたような気分になるもんなんですね。
しばらくすると、がらっと店のドアがあいて、
白い上っ張りをはおったおっさんが、肩をすくめながら入ってきた。
「ひゅううう、ふううううう」
声にならない声をあげながら、乾燥機の窓をあける。
近所のお蕎麦屋さんらしい。
「ひゅうううう」
おっさんは肩をすくめたまま、洗濯物をとりだすとそのままビニール袋に押し込み、
そそくさと出ていく。その間、わずか20秒?
おっさんの全身から「忙しい忙しい、寒い寒い、やれやれ、あとちょっとだ」
って声が聞こえるようだった。

子供のころと違って、もはや私の部屋はかたづかないまま、年が暮れてしまう。
新しい服が枕元におかれていることもなくなった。
お年玉をくれる人も、いない!!
でも、新しい年の新しい朝は、まだちゃんと、十分に清々しさをもって、私を訪れてくれている。
正月二日。山手線のホームで交代を待つ運転手さんの、散髪したての青い襟足は、清々しすぎて、気恥ずかしいほどだったけど。

清々しいって、いいなぁ。清らかって。

どうぞ、はじまったばかりのこの新しい年が清新なものでありますよう。
つつがなく、平安なものでありますよう。

作家
: 正本ノン
プロフィール
   
星座
: 水瓶座
血液型
: A 型

診療時間

診療時間表

休診日
第2・第4・第5土曜日、日曜日、祝日

外観

世良心療内科クリニック

〒047-0032
小樽市稲穂2-9-11 ツルハビル3F
(JR 小樽駅下車 徒歩4 分)

TEL.0134-24-4556 FAX.0134-24-2556

アクセスマップ Google MAP

コラム

世良心療内科クリニック

TEL.0134-24-4556 FAX.0134-24-2556 小樽市稲穂2-9-11ツルハビル3F

  • TOP
  • クリニック概要
  • 診療の流れ
  • よくある症状
  • アニマルスペース
  • お知らせ
  • コラム
  • アクセス
copyright (c)2014 SERA MENTAL CLINIC All Rights Reserved.