世良心療内科クリニック

小樽市の心療内科、精神科 世良心療内科クリニック

  • TEL:0134-24-4556
  • FAX:0134-24-2556

コラム

baby step

3.11

3月11日
その時、私は調子が悪く2階の自室ベッドで
ごろごろ韓国ドラマを見ていた。
身体が揺れたので、まためまいかと思った。
が、すぐ、激しい揺れが襲ってきた。
ガラス窓がびりびりなり。家じゅうが軋み音をあげた。
あわててはねおき、片手で机の上の地デジを抑えた。
もう片手は壁について、母の名を叫んだ。
地震には慣れていた。東京はけっこう地震が多いのだ。
だが、いつもとは全くちがった。

瞬時に、神戸のことがよぎった。

10数年前。阪神淡路大震災のあの日、1月17日。
私はその前々日まで、神戸にいたのだ。
初春の京都大阪で七福神めぐりや商売繁盛の十日戎を楽しみ、
神戸にまで足を延ばしていた。
ほんの数日前、小春日和だぁとコートの前をあけて歩いていた街が、
ぐしゃぐしゃになって煙をあげている。

もし、まだあの街にいたら・・・・そう思うと、他人ごとではなかった。
その神戸と、同じことになるの???

よろけながら廊下に出ると、階段の下、母がズボンをずりあげながら、
柱にしがみついていた。
階段の上と下で、悲鳴をあげながらも互いの姿を確認し、
壁にへばりついているのが精いっぱいだった。
ペンダントライトが振り子のように大きく揺れ、今にも割れおちそうだった。
テレビでは緊急放送が入り、東北地方が震源であること、
でも、東京は震度2と出てますかね、なんてアナウンサーの声が聞こえ、
ふざけるなよ!と思った。

強い余震はその後も何度もおこり、そのたびに恐怖したが、
やがて未曾有の大震災の現状が次々と報じられ、
東北地方を襲ったツナミの惨状を見るに及んで、
本当にとんでもないことが起こったのだと、実感した。

今、東京では計画停電やら、原発の放射線もれや、
通勤難民の問題がいろいろでているけれど、
そんなもの、あの沿岸部の人々の被害から見たら、
なにほどのものでもない。
スーパーでは品の棚があっというまに空っぽになっているけれど、
我が家は買いだめはしない。
ティッシュやトイレットペーパーも、今までの買い置き分を使って、
当面はしのぐ。

今から60数年前の3月10日。
第二次世界大戦も末期の東京下町は、未明に米軍の空襲をうけ、
何万という人々が犠牲となり、一気に家も財産も失った。
うちの母も、その中の一人だ。
まだ中学生だった母は、避難しようと駆けこんだ防空壕で、
いっぱいだからダメだと追い払われ、かろうじて別の防空壕に逃げ込んで
一命をとりとめた。
初め、母が駆け込んで拒否された防空壕は、直撃をうけ、中にいた人は全滅だった。
何が幸いするかわからない。
人の運命を分けるものは、いったいなんなのだろう?
あっちにもこっちにも焼け焦げた死体が折り重なる一面の焼野原。
黒焦げの遺体からは、まだ胸のあたりから
チロチロと赤い火がくすぶっているのが見えたそうだ。
下町の人間は、死者を野ざらしにしておくようなまねはしない。
だが、あまりにも多くの遺体を前に、手の施しようがなかった。
そうして、打ち捨てられたままの遺体からは、しばらくのあいだ、
夜になると青い火がぽぉっと浮かんでいたそうだ。

節電のせいもあって、今、テレビは朝夕、情報を確認するくらいしかつけない。
そんななか、津波で壊滅状態になった家を前にしたおばあさんの映像が流れた。
我が家はまだ先だが、ここらへんに流れついたらしいので・・・と、カメラに答えているさなか、救助隊が一人の遺体を発見した。なんと、おばあさんの夫のものだ。
泣き叫ぶかと思ったら、おばあさんは全く正反対の言葉を口にした。
「あぁ、よかった。よかった。お父さんが見つかって」

その時、小樽の友人は資格試験の講習のため
、ホテルの地下でビーフカレーを調理中だった。
札幌の友人は、美容院でパーマをかけていた。
新宿の友人は、プールのあと、シャワーを浴びていたが、
ぐらっと来たので、もうこれだから更年期は・・・と思ったそうだ。
調布の友人は、スーパーに買い物にいくところだったが、
怖さのあまり、通りすがりの男性にしがみついてしまったそうだ。
揺れている間、ずっとしがみついていたが、
けっこうな長さだったので、あとで恥ずかしくなったとか。
うちの母は、トイレの最中で、こんな格好で死んだらみっともないと
あわててパンツをずりあげたのだとか。

人さまざまの人生が、そこにはある。
運と不運。

昨日、買い物に行くと、後ろでおばあさん同士が話していた。
「人間、いつ死ぬか、本当にわからないね。
誰が助かって、誰が死ぬか。寿命と思うしかないんだねぇ」
友人は、大きなおなかの若い女性が話しているのを聞いたそうだ。
「もう死ぬかと思った。でも、ま、いっかと思ったよ。
私、結婚もしたし、妊娠もしたしさぁ」
おいおい、いいのか、まだ生まれてないぞと、突っ込みたかったわと、友人は笑った。

地震の翌朝、テレビで惨状を目の当たりにしたあと、ごみを出しに行くと、
カラスがビニール袋をつついて、餌をあさっていた。
そうだよなあ、カラスも、生きていくのに一生懸命なんだよなぁ。
失われた人々のことを思い、追い払う気もなく、しばしその姿を眺めていた私。

被災3日目。
仙台市に住む友人からは、一家全員無事であったこと、
ガスも電気も水道も通じていないが、なんとか、ご近所同士助け合っていること、
そして、こんな時に、なんと新しい生命が誕生したと、メールが入った。
姪御さんが赤ちゃんを産んだのだそうだ。
「こんな時に生まれてくるのだから、きっと運の強い子なのでしょう」
友人のメールはそう結ばれていた。

幾多の犠牲者の冥福を祈りつつ。

それでも、きっと春はくるでしょう。

作家
: 正本ノン
プロフィール
   
星座
: 水瓶座
血液型
: A 型

診療時間

診療時間表

休診日
第2・第4・第5土曜日、日曜日、祝日

外観

世良心療内科クリニック

〒047-0032
小樽市稲穂2-9-11 ツルハビル3F
(JR 小樽駅下車 徒歩4 分)

TEL.0134-24-4556 FAX.0134-24-2556

アクセスマップ Google MAP

コラム

世良心療内科クリニック

TEL.0134-24-4556 FAX.0134-24-2556 小樽市稲穂2-9-11ツルハビル3F

  • TOP
  • クリニック概要
  • 診療の流れ
  • よくある症状
  • アニマルスペース
  • お知らせ
  • コラム
  • アクセス
copyright (c)2014 SERA MENTAL CLINIC All Rights Reserved.