世良心療内科クリニック

小樽市の心療内科、精神科 世良心療内科クリニック

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コラム

baby step

3大ニュース

熱い緑茶がおいしい季節になった。
ついこないだまで、ひえひえの麦茶だのなんだの言ってたのに。
気がつけば、もう師走。
1年が終わろうとしてるなんて。
私、家じゅうの衣替えしたの、つい先週なんですけど・・・。

“今年の10大ニュース”なんて特集が、どのテレビ局でもにぎわすころだけれど、
今年最大のできごとといえば、東日本大震災をおいて無い。
あろうはずもない。

私個人の3大ニュースのトップも、もちろんこの大震災だ。
あ、10大じゃないのは、平凡な暮らしの中ではニュースと呼べるほどの出来事がないからです。
つまらない?いや、ありがたい。
日々つつがなくあること以外に、なにほどの願いがあろうか。
人間、半世紀以上も生きてくると、本当にそういう気持ちになるもんなんですね。
知らなかった。
あれも欲しいこれも欲しいとは、本当に思わなくなった。
吾唯知足。
われ、ただ足るを知る。
なんっつって、ソウルとかマチュピチュとか、即行きたいとこは山とあって、あぁ、宝くじでも当たんないかなぁ~~~
とは思いますが。

あ、で、2位ですが。
それはなんと、近所で起きた殺人事件だった!!
うちから歩いて、わずか3分。
一つ目の信号を右折して、1つ目の四つ角。
駅へ行く途中の商店街。
な、なんとほぼ毎日通る、マツキヨのとなりの地下にあるゲームセンターで、事件は起こった。
10月のとある昼下がり。
いつものようにママチャリでパンやさんに行こうとして、
なんとなくヘンな感じがした。
いつもよりなんとなく人出が多く、そこここでビミョーにたたずんでいる。
言葉を交わすわけではないのだが、誰もがなんだか他人の顔色をうかがっているといおうか。
少しいくと、今度は警官の姿があった。
路地の入口に警官がひとりなんとなく立ちふさがる感じで、通行をさえぎってるふうだ。
「なにかあったんですか?」
聞いても、警官は言葉をにごすだけ。
「えぇ、まぁ、ちょっと」
そういったきり、警官はさりげなくそっぽをむき、これ以上聞いてもだめだよとやんわり示す。
前に異臭騒ぎがあった時もそうだった。
結局は老朽化した管からガスがもれただけの話だったのだが(ま、それもちょこっと大事ではあるが)、お巡りさんはなんで警戒線をひいているか、こたえてはくれなかった。
情報不足は不安をもたらすだけなのに!
が、日本には、(いや、世界には)オバンという種族がいる。
パン屋にいくと、お向かいのスーパーの前でチャリにまたがったまま片足をつけ、ケイタイにむかって声をはりあげてるおばはんがいた。
「そうなのよ。さっきからずっとまってるんだけどさ。うん、うん。こわいわよねぇ。うん、もうちょっとしたら帰るから。うんうん」
ケイタイを切ったおばはんにすかさず聞く。
「なにがあったんですか?」
「それがさぁ、殺人ですって!」
「殺人?!どこでですか?」
「そこのゲーセン」
え、え~~っ!!!
目と鼻の先じゃん!!
歩いて30秒もかからないところで、人が殺されてるの?
それでも、私はとりあえずパンを買い、スーパーで牛乳やトマトを買い、もと来た道をもどった。
そのわずか数分のあいだに、あたりの様子はうってかわっていた。
人出はさらに多くなり、あっちでもこっちでも2,3人のかたまりができ、みんな腕組みしたり、眉をひそめてひそひそやっていた。
なんとなくざわざわした不穏な空気があたりをおおうのをまのあたりにしたのは、これが初めてだったかもしれない。
人びとからわきあがってくる不安や不信感が、明らかに一つの昏いトーンをもって、あたりを侵食している。
もしかしたら、戦争がはじまるときとかも、こんなかんじなんだろうか・・・なんて唐突な思いまでよぎったりする。
さっきまで、警官がたっていた場所には、太い黄色のテープが張られ、POLICE ,NO ENTER とかなんとか英語で書かれていた。
一人だった警官は二人に。
そして、そのまわりには、ケイタイ片手に多くの報道陣がたむろしていた。
長丁場にそなえてか、いかにもマスコミって感じのちょっとかっちょいいようなおにいちゃんがコンビニから食料を調達してきて、先輩にさしだしている。
脚立をかかえたカメラマンのおっさんが、撮影ポイントをさがして行きつもどりつする。
テレビ局の名前の入った報道車のはるか頭上には、ヘリコプターが舞っている。
ザ・事件 って感じ。
「殺人があったんだって!」
家に帰るなり告げると、母が突如たちあがる。
「なんですって?!あらら、そりゃ大変。どこよ?行かなくちゃ!」
今の今まで居眠こいてた80の婆さんが。
「やめないさいよ、人が死んだんだよ?」
「またぁ、いいコぶっちゃって。どこどこ?お父さんの代わりに行ってこなくっちゃ」
・・・・たしかに、亡くなったうちの父は、お調子やというかなんというか、なにか大きな社会的事件が起きると、そこへ行きたがった。
自衛隊反対とか言っておきながら、米軍の原子力空母インデペンデンス号が寄港したときには、横須賀だかどこだかまでいって、艦長と嬉しそうに写真まで撮ってもらってきてた・・・・・。
「おれは我が家の特派員だからな」
というのが、父の口癖だった。
政治家が嫌いで、
「我が家は独立国だ。いちおう、日本の通貨は流通させているが、日本国とは、方針を異にする」
とも、よく言っていた。
「ほぉ、じゃ、元首はだれ?おとうさん?」
と、からかうと、
「うん…それは、お母さん」
と、照れていたのも懐かしい思い出だ。
ともあれ、そんなわけで、母は、父の代わりにと、張り切って、駆け出していった。
少ししてもどってきた母は、現場や被害者についてアレコレしいれてきていた。
「うっそぉ、誰にきいたの?そんな話」
「局の若いの。ちょっとあんた、どこのテレビ?ニュース見るわよって言ったら、喜んで教えてくれた」
得意げな母。
いや、日本のおばはん力って、たいしたもんですわ、ほんま。

事件はその夜、すべてのニュースで報道された。
そこに映し出された被害者の顔を見て、母が絶句した。
「この人、知ってる・・・」
ええ~~っ!!
事件現場の2軒さきに、1杯200円ほどの小さな安コーヒー屋があって、近所の奥さんたちのちょっとしたまり場になっている。
韓国ドラマの話題でご近所さんがもりあがる、そんな店に、その資産家の被害者もよく顔をみせていたのだという。
母は2度だけ言葉を交わしたことがあるそうだ。
被害者は向かいのマンションのオーナーでもあり、たいした財産家と町内でも評判だったそうだ。
だが、長居しても、おかわりはせず水ばかり頼むので、
店のママさんが「このケチ!」とか、よくからかっていたのだそうだ。
「おじさん、財産家だっていうけど、なんでそんなにお金もちなの?」
おしもおされもせぬ日本の偉大なおばはんであるうちの母がたずねた。
「あぁ、最初は八百屋だったんだけどね、それが戦後儲かって儲かって・・・」
あと、母が話したのは、簡単なあいさつ程度だったという。
だが、母の落ち込みはしばらく続いた。
「ちょろっと知ってるっていうだけなのに、イヤなもんだわねぇ。普通に死んだってイヤなもんなのに、こんなに突然、事件に巻きこまれてなんてね・・・・。

侵入禁止の警察のテープがはずされたのは、事件から4,5日たってからだったろうか。
当日、閉店を余儀なくされたマツキヨは、翌日も店を閉めていたんだっけかな?
駅前からのメインストリートにあたる道だけれど、しばらくは避けて通っていたので、よくわからない。
事件の翌々日は、確か雨だった。
氷雨のなか、まだ報道陣はへばりつき、警官は雨合羽のまま、傘もささずに、黄色いテープのはられた事故現場の前に立ちつくしていた。
だが、3、4日は声をひそめるようにしていた町の空気も、1週間もすると、急速に回復(?)しだした。
10日もすると、殺人事件のサの字もなくなった。
警官の姿も見かけない。
ゲームセンターの地下へおりる階段の入り口にかかっていたブルーシートもはずされ、すぐ横の中華料理店では表にお惣菜パックをならべた台の前で、中国人のおねえちゃんが
いつものように”安イデスヨ~”と声をはりあげる。
マツキヨの前には安売りのティッシュやシャンプーがどこかどか積まれ。
不穏な空気は、どこぞへあっけなくかき消え、私も何事もなかったかのように、チャリンコで現場の前を通り始めた。

犯人は比較的早くつかまった。
常連の若者二人が、金目当てに起こしたものだったが、実際の被害額はわずか10万円ほどだった。
たったそれだけの金のために、一人の命が奪われ、まだ20歳そこそこの犯人の将来も奪われ、遺族はもちろんのこと、犯人たちの家族の暮らしにまで取り返しのつかない被害を残すんだ?
たった10万円のために?
犯罪ってのは、なんとわりにあわないことなんだ!!

全国ニュースで流れたため、友人たちからいくつかメールが届いた。
「すごいね。さすが都会だね。そんな事件が起こるなんて」
って感想には笑った。
パン屋の店主と客の会話にも笑った。
「すいねぇ、びっくりしたねぇ」
「ねぇ?あんな黒い立派な車ばっかりずら~~~っと並んで」
「ほんとっ。ここらじゃ、あんな車見ないもんねぇ」
って、おいおい、そこかい??
人が殺されたことより、マスコミがチャーターし黒塗りのハイヤーの列にびっくりしてるよ、この人たちってば。
でも、いいのか、それで?
たくましいやぁ。

いろんな辛いこと、怖いことも、忘れていって、日々の暮らしを送っていく。
自分がいなくなっても、世界にはなんの痛痒もないのかと思うと、ふとさびしくもなるけれど、それでも、忘れて忘れて、前にむかっていくっていうのは、すごいことだなぁ。
すごいことかもなぁ。

わっ、なんかしみじみしてる間に、2位だけでもういっぱいになってしまった。
続きは、また次回。
忘れても忘れても、忘れちゃいけないこともあるんだよなぁ、たぶん。
てなわけで、とりあず、風邪などおめしになりませんよう。

作家
: 正本ノン
プロフィール
   
星座
: 水瓶座
血液型
: A 型

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第2・第4・第5土曜日、日曜日、祝日

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