世良心療内科クリニック

小樽市の心療内科、精神科 世良心療内科クリニック

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コラム

baby step

ファシズムの官能

シャラシャラ パイプオルガンの音が天井からふりそそぐ。
ステンドグラスからさしこむ光で堂内は淡い薔薇色に染まっている。
小学校の教室を少し長くしたくらいの小さなチャペルには、
オルガニストのほかには、だれもいない。
“どうぞ、御自由におはいりください”
立札に導かれて、そおっと、一番近くの簡素な長椅子に腰をおろす。
オルガニストは、侵入者にふりかえることもなく、壁のオルガンにむかい演奏をつづける。
その調べはきらびやかではあるけれど、荘厳で、なんだか天上からの贈り物のように美しい。
礼拝堂のなかは音楽で満たされているのに、静謐感にも満ちている。
わたしは、無言で堂内をあおぎ、小さく息を整える。
背筋を伸ばす。
目をつむる。
すると、オルガンにふきこまれる風の音が、なるほど神様の息吹のように思えてきたりもする。

月に何度か、近くの大学へ雑誌を買いに行く。
そのたびに小さなチャペルの前を通る。
朝のキャンパスにはまだ学生の姿もまばらで、礼拝堂には人のいたためしがない。
パイプオルガン素晴らしいなんてどこにでもあるもんじゃないのに
誰も聞き手がいないのがもったいなくて、ときおりのぞく。
小さいとはいえ、たったひとりの礼拝堂で演奏をきくなんて、どんなに贅沢なことか。
じつは、これ、本番ではなく、正規のミサのための練習らしく
、ときおり、間違っておなじとこ繰り返引きなおしたりするのだが、それもご愛嬌。

クラシックを聴いていると、ごちゃごちゃした感情がリセットされるというか、
頭の中をクリーニングされた気分になるのだけれど、
ここでの演奏にも同じクーリング効果がある気がする。

静謐感ただよう落ち着いた空気のなかで、柔らかな光と調べに包まれていると、
あぁ、いい人間いならなくちゃだなぁとか、うん、神様っていても悪くないなぁ
すくなくともなんかどっかにおおいなる存在ってあるかもぉ~~~とか思ってしまう。

う~~~む、私を洗脳するのは簡単だなぁ。

そういえば。

その昔、東京のカテドラル教会というころで、ヘンデルのメサイアを聴いたことがある。
式は小澤征爾。
モダンなコンクリート建築で知られる教会は、内部もすっきりシンプルで、
最初はだだっ広く感じられた。
けど、若きマエストロ(そのころは、まだ今みたいな山姥風じゃなかったのです・・・!!)が、
指を一振りすると、一挙に空間がぎゅっと詰まって、光りにつつまれ、
同じ一つの箱舟にのせられて空に吸いあげられていくみたいな浮遊感にとらわれた。
それまで、ただの飾りでしかなかった中央の十字架が、
メサイアの合唱とともにブワ~ンッと上昇していくように見えた。

もちろん、それは単なる”感覚”で、実際に十字架が動いたわけじゃない。
でも、何十年かたった今でも、あの小澤征爾の指先から音楽が”生まれた”瞬間の
光景は心に残っている。
それは、魔法のような瞬間で、一時、小澤はわたしの憧れだった。
今、その座は、彼の弟子の佐渡裕にとってかわられていますが・・・(へへ)
でも、あれ、メサイアだったってとこが、ミソですかね。
ミソじゃなくてミサ曲とかって、キリスト教とかにかぎらず、法悦っていうのか、
ある種の官能を帯びていいる気がする。
陶酔させるなにか、というか・・・。

お茶の水のニコライ聖堂で聞いたロシア正教の祈りの歌なんて、
美しいなんてもんじゃなかった。
白い漆喰の壁に金色の縁取り、一面きらびやかな意匠のほどこされた美しい堂内は
しかし、ほの暗さのなか非常に厳かで、
幾多の燭台の灯りに十字架と聖人の貌をぼんわりうかびあがっている。
わずかに甘けむい香の白い影が、かすかな光にもやい、
耳慣れぬ響きの言葉による男性司祭たちのゆったりとと深い声の合唱につつまれると、
エキゾチズムを通り越し、もはや異空の夢をさまようようで、。
このまま、どこかにつれていかれてしまっても、陶然としたまま、
私はうけいれていしまうのかも。
そんな気がしたほど。

やばいよやばいよやばいよ~。

似た経験は、高野山でもしたことがある。
かつては山ひとつ丸ごと結界をはり、
女人の入山をこばんでいたという日本屈指の霊地・高野山。
まつられているのは、こ日本国中をまわりウランや水銀の鉱脈を発見、
杖をついた場所から温泉がわきだすなど不思議な力をそなえていたという弘法大師。
その大師の眠る金剛峰寺で、入場券を買うと”お受戒”という券がセットになっていた。
なにせ入場券とセットなくらいだから、たいしたもんじゃないと思うじゃないですか?
ところが、これが、とんでもないものだった。

お受戒は、一日になんどか時間が決められ、定員もきまっているらしい。
何十畳もある広い控えの間で待っていると、定刻になり、案内の僧によって、
外廊下へ導かれる。
その先にあるのは、いましがたの広間からは比べようもないくらい小さなお堂で、
なんだかいきなりちょっと心もとない気持ちになる。
説明は一切ない。
堂の入り口で、僧侶がてのひらになにか粉のようなものをのせてくれる。
全員で、20名ほどもいただろうか。
みんなが中に入ると、静かに扉が閉められ、と、とたんに真っ暗闇になった。
となりに誰がいるかもわからない、本当の暗闇。
異様な空気がはりつめ、口をきくものはもちろん、いない。
たぶん、みんな圧倒されているのだ。漆黒の闇そのものに。
これから何がおこるんだ?
自分の飲みこむつばの音が聞こえそうなほの静けさ。沈黙の積滞。
と、そこへ一陣の風が起こる。
闇が動き、だれかが前方から入ってきたのが、わかる。
ふっと、ちいさく明かりがともる。
蝋燭の火。
だが、なにかでさえぎられているのか、ホタルほどの小ささしかない。
シュシュシュッ。
なにかが空を切る音がする。どうじに、キラッ、ホタルほどの明かりに
なにやら刃物めいたものが反射して光る。
シュッシュッシュッ。
あぁ、なんというんだっけ?
よく時代劇とかで山伏なんかが目の前で斜めに十字を切ったりして、
場を清めたり呪いをといたり?するやつだ。
やがて、行の僧とおぼしき人物が、静かに命じる。
「両手をあわせ、ともにお唱えください、
ナムヘンジョウコンゴウタイシナムヘンジョウコンゴウタイシナムヘンジョウコンゴウタイシ・・・・」
南無遍照金剛台大師・・・・・・。
ちがったかな?たしか、そんなような呪文だった
つい先ほどまでは互いにまったく見知らぬ他人の、一観光客だったのに、
20名からの人間の声がかさなりあって、
小さなそれも真っ暗でほのかなぬくもりのする閉鎖空間にびきあうってさ・・・・
それがまぁ、どれだけ妖しいものか。
そして、そこには、もうひとつ、妖しさをいやます香りという存在があったのだ!!
堂内に入るとき渡された粉のようなものは、どうも練香とか塗香というものらしかった。
ナミウヘンジョウコンゴウタイシナムヘンジョウ・・・・と、わけもわからない呪文をとなえるとき、
あわせた両手から、そりゃぁ甘いよい香りがたちのぼるのだった
それも、安っぽい香りではなく、なかなか高貴な感じのやわらかい甘さで、
あぁ、こんなことこのままずっと続けていたら、わたし、この心地よさに身をゆだねてしまいそう・・・・

そう思ったlころ、ちょうど、呪文はおわり、前方の行者?が説法をはじめた。
そしたら、あ~~ら、不思議、その声があたり前のことだけれど、ごく普通の
人間の声だったので、わたしはすっかり現実に戻り、
あらら、今の今までのあの
感覚はなんだったんだろう???いかんいかん・・・と、
闇のなか、大きく首をふったのだった。

奈良・薬師寺のお水取り
毎年3月30日から4月5日にかけて行われる花会式という行でも同じような感覚を味わった。
お薬師様と日光・月光菩薩のいるお堂は、完全に扉をしめると、ほのかな蝋燭のあかりより、頼るものはなく。
そんななか、とつじょ大音声がして、ぼわぼわじゃんじゃん・ほら貝の音や鉦が打ち鳴らされ
石の床には僧侶たちの下駄の音がガランガラン響き、聞いたこともない節つきのお経は天も吹き飛べとばかりの勢いで。
列をなした僧が賑やかな音声とともに周回して去ったあと、不意に静まった堂のなか、
なにかがソソソッと走り抜けたと思ったら、頭巾をかぶった僧が腰をかがめ四隅でたちどまり、
杖のようなものを触角みたいにふりまわす。
昆虫みたいなしぐさの僧が消えたあとは、ふたたび、大音声の僧侶の行列。
それがなんどかくりかえされ・・・・。

陶然とどこかにつれさられそう・・・にはならなかったけれど、
ときおり扉を揺らす風や堂内を満たす空気の密度や地の力?とか
自分をとりまく自然になんだかやたら細胞が反応する、
太古から続くなにものかの匂いとか、時の流れとか、
生きているのは人間だけじゃないのか??とか
なんだかひどく不思議な感覚にとらわれたのは事実だ。

出雲大社のお祭りを見に行ったのは、ちょうど今頃10月の20日すぎのころだった。
年に一度、海から神様をお招きするという神事は、
夜、海辺でかがり火をたいて行われる。
昼間はなんてこともない、ただの渚なのに、夜というだけで、海は少し怖いというか、
まるで違う貌をしているように見える。
かがり火が、またなんだか、時代感覚を狂わせるというか、
今が20世紀のモダンテクノロジーの(それも、古いですね)ただなかだということを
忘れさせるというか、
なんかいきなりはるか古代と地続きになってる感覚というか、
原初に、いとも簡単にタイムスリップさせてしまうのだ。
自分が縄文の人間になったような気分と申しましょうかさ。

かがり火のあいだには、ひもろぎといって、神様が天からおりてきて宿る神聖な場所として
竹で四隅をしきり、縄と御幣をはった結界ができている。
黒い海のはるか頭上、月がこうこうと照っている。
お月様ってこんなにも明るいんだっけ?
力強くさえ見える。
風がひょろりとしたひもろぎを揺らし、、笹の葉がさやさやざわわと鳴る。
ドドドドドッドッ。大きな音は海鳴りだ。
黒い海に、波が巻き上げく白く光る。
やがて、10人からの神主が、列を組み、海に向かって深々と頭を垂れる。
「ほぉ~~~~~っ!!」
一斉にあげたのは、、どうやら神様をお迎えいたしますよという”奉”という声らしいが、
定かではない。
浜辺に参集した人々は3、400人もいたろうか?いや、もっとか?
なにせ、だだっぴろい海辺では、あまたの人がいても、ちっぽけなかたまりにしかならないのだ。
濃い藍色の空高く輝く月の光りが、水面で銀色の帯とも橋ともつかぬ模様を描く。
出雲の神様は、はるか海の彼方からこの銀の道を通って、やってくるらしい。
「かけまくもなんたらかんたら・・・・」
海にむかって。祝詞をあげる声が、潮風にあおられ、大きくなったりかすれたりする。
やがて、竿にはられた白い布で、浜辺の一角が覆われる。
周囲から歓声があがる。
どうやら、神様が無事いらしたらしい。
神主の一行は、神様がいらっしゃる白布を先頭に、浜をひきあげ、大社へとむかう。
その横やら前後を人々が吾も吾もととりすがるようについてゆく。
白布で囲われたなかには、三宝に乗ったご神体がまつられているそうだが、
決して覗いてはいけない決まりだそうだ。
見てはならないご神体につき従う一行は、そのご出雲大社の神殿内で引き続き神事を行う。
帰りを急ぐわたしがみたのは、そこまで。
日本の神道ではご神体が山そのものだったり、大木だったり岩だったりすることが多いという。
いわば、自然崇拝。アニミズム。
道理で、ひょいっと古代に生きてたような気分になるわけだ。
そもそも、だいの大人になって、夜の海で何かを待つなんて、それもかがり火のもとで、なんて。
それだけで十分、不思議な体験だったりする。

というわけで、
高野山、出雲大社、ニコライ聖堂。
おすすめです!
もちろん、あくまでも、異体験としてですが。

洗脳というと、聞こえは悪いけれど、
いったい、宗教にはすべからく人を思考停止にして惑然とさせる要素が
少なからずあるように思うなぁ。
古くから続いてきた宗教は、その手法が淘汰され危険な部分が徐々に排除され
、今に至っているんだろうけれど、儀式のおりふしに、
ふいっと根源的なそういう魔術的ななにかが顔をのぞかせる気がするなぁ。

今、巷ではひさしぶりにマインドコントロールが再注目され、
尼崎の一人の女が起こした数家族もの殺害事件が波紋をよんでいる。

オウムの記憶もうすれかけている昨今だけれど、判断停止にだけはなりたくない。
なにかがおかしい、そう気づくセンサーを失わないようにしなくては。
なんてネ、人一倍、雰囲気に酔いやすい=洗脳されやすいわたしが言うのもなんですが。

そうそ、洗脳とはちがうけど。
私がこれまでに聞いた一番セクシーな声は、イタリア・ミラノ駅の構内アナウンス。
3階建て分はゆうににありそうな駅舎ドームの吹き抜け天上から、その声はふってくる。
深く耳あたりのいい男の声で。
ビナーリオセイ ペルヴェネーツィア ヌメロウーノ・・・・
あぁ、こんな声で命令されたら、すぐファシズムに走ってしまいそう!!
そりゃぁうっとり官能的な声だった。
今も耳に残ってる。

おりしも、なにやら世の中は強いリーダー待望論がかまびすしく。
やたら勇ましい発言の政治家がマスコミをにぎわせているけれど。

ファシズムに走るのは、旅の追憶のなかだけにとどめておこうっと。

月の美しい夜。
静寂に耳をすませたら、あなたにはなにが聞こえてくるでしょう?
ひそやかに深まる秋をお愉しみくださいますよう。

作家
: 正本ノン
プロフィール
   
星座
: 水瓶座
血液型
: A 型

診療時間

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第2・第4・第5土曜日、日曜日、祝日

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