世良心療内科クリニック

小樽市の心療内科、精神科 世良心療内科クリニック

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コラム

baby step

帰らないでぇ

「帰らないでぇ」
と、まじに泣かれた。
60才をむかえる仲間のために、
“昼間っからぐだぐだワイン&うまいもん会”をと、
友人宅に集まった時のこと。

「なんで~、なんで帰っちゃうの?さびしいの。一人にしないでぇ」
いつもひょうひょうとしているA子が、泣いて私たちの腕をひっぱった。

郊外の住宅地。
行きは急行の停まる駅に集合。
車でむかえにきた友人と、まずはデパ地下でお買い物。
ワインは万事気がきくTちゃんが、ネットでずでに手配済み。
「ね、ね、これってさぁ、もはや、トマトの値段じゃないよね?!」
「あ、サーモンさぁ、スモークしてないのでいいよ。高いから」
「しまった。違う店のクーポンもってきちゃったぁ」
「もぉ~っ」
なんて、会話はおばはん主婦丸出しなんだけど、
気持ちは、学生時代のコンパ気分のまんま、
ワイワイ、カゴに食材ほおりこんで。

「もう、みんながくるからさぁ。がんばって掃除したんだけど、
汚いから、あんまりいろいろチェックしないでね」
玄関に入る前に、あらかじめ懇願(?!)されていたにもかかわらず、
「あはっはぁ~、拭き残し発見~っ」
と、叫ぶやつはいるし、もう最悪っ!
って、わたしです、それ言ったの。ごめんごめん(^^)。
そしたら、もう一人がすかさず、
「ふきん、とって?」と、ぱっぱか、拭きだしたりして。
「もう、やだわ」
とかいいながら、A子も、笑ってられるところが、
なんといっても昔からの友達のいいところ。
それに、わたしとA子は、どっちがより”かたづけられない女”かをめぐって、
互いに自分の方がひどいと言いあい、ひそかに部屋の様子を写メして
送りあった間がらなのだ。
なんで、そんなアホな約束をしたものか、
あまりに散らかった自分の部屋をうちながめた時は心底後悔したけれど。
あ、結果?
そりゃぁ、まぁ痛みわけというか、どっちもどっち!!!という・・・・。

A子が結婚して30数年。
その間、家を訪ねたのは、今回でわずか3,4回。
それでも、なんだか、全然遠慮しないんだなぁ。
する必要もないっていうか。

さて、今回集まったのは、全員がまもなく還暦をむかえるというほかに、
みんなで、彼女が最近出たテレビ番組を見る!!!というスペシャルな
できごとのためだ。
桂三枝の『新婚さんいらっしゃぁ~い』の、熟年版みたいのがあって、
なんとA子夫妻が出演したのだという。

放送前に、一斉メールで知らせがきたのに、私ときたら、当日の夜
オンエア5分前にはテレビをつけ、待ちうけていたにもかかわらず
なんと気づいたときには、もう朝だったという・・・。
つけっぱなしのまま、寝入ってしまってたのね。

他のふたりは、ちゃんと見た。
「きれいに映ってたよ!」
「お嬢様と理系オタクの恋物語って感じだった!」
「でも、だんな、幸せそうだったねぇ」
「多少脚色はあるけどね」
そんなメールがいきかい、
初めは、ノンにもDVDを送って・・・・とか言っていたのが、
いっそ、みんなで再度オンエアチェックだぁ!!ってことになったのだ。

「なんかさ、セットがビミョーだね」
「BSだもん。予算ないのよ。お、出たぁ!」
「わ、だんな、老けたねぇ!」
「でしょう?失礼しちゃうわ」
「失礼って、なにが(^^)」
「だって、こんなのが亭主ってさぁ・・・」
「まぁまぁまぁ」
「そういってるわりには、幸せそうじゃん。ちゃんと」
「あったりまえよ、テレビだもん」
「そうそ。ね、ね、ここの再会のくだりは、脚色でしょ?」
「いや、これはほんと」
「うっそぉ~」
「運命なんじゃぁ~ん」
なんてね。これで、ほぼ還暦の会話ですから。

私達の人生って、ほんと”7掛け”かも。
これ、今の人は寿命が長くなった分、成熟度もへってるんで、
実年齢の7割くらいの大人度だと考えれば妥当か、って説。
つまり、60歳の7がけだから、42歳か。
42歳にしても、なお、人生の重みや深みとは無縁の
アホな会話だと思うけど・・・。

ともあれ、当人の解説つきで見るちょこっとドラマチックにしたてられた
夫婦の物語は、やたら笑えた。
知人が画面のなか、お澄まししてる姿は、、照れくささもあって、
なんでもないとこで、爆笑したりしてしまうのだった。

だが、なにより驚いたのは、ときどきはさまれる昔の写真だった。
えっ、A子って、こんなにきれいだった?
「わぁ、ほんと、お嬢様だぁ~」
「お見合い写真だもん。プロの腕、腕」
「いや、それにしてもさ」
数枚の写真のなかの若き日のA子には、なんというか、
ほのかな恥じらいというか、
はにかみのようなものがあるのだった!!!

これって、時々、テレビで流れる昔の映像でも感じることだ。
女優もアイドルも、今の子とは、全然違う。
どうはちきれて元気でも、なんか今にはない
しっとり感がある気がするんですけど。
どうですか?

たしかに、A子は、お嬢様学校の出身だった。
そういえば、大学に入ってびっくりしたのは、クラスメートに
地方の大金持ちやらロータリークラブ会員だの
なんかそれまでの生活では見たこともないようなとこの
子が、全国から輪沢さ集まってきていることだった。はぁ。
富山県生まれの釧路育ち、一介のサラリーマンの娘の私には、
なんかもう目シロクロの世界。
そう、つい1年半前に、親の転勤で釧路から東京へでてきたばっかの
私には、あの頃ってめちゃくちゃ激動の時代だった。

ウーマンリブにロックアウト。
釧路の高校じゃ、せいぜい制帽廃止運動とかで生徒会がわぁわぁ言ってる時に、
東京じゃ、校舎占拠ですぜい??ワイルドだろう??
高2の9月に転校して、10月には学校がロックアウト。
つまり、生徒たちが、ベトナム戦争反対とか、
自治とかを求めて立てこもったために、授業がなくなったのだ!!
それどころか、登校じたい、しなくてよくなってしまった!!!
すごくないですか?

本当にそんなことがあったのだ。
この日本で。

本当に世の中を変えたいと、東大生が安田講堂にたてこもって
その年は東大の入試がなかったなんて!!

結局、年明けには、ロックアウトが解除されたんだったかなぁ。
よくおぼえていない。
ともあれ、3年になってクラス変えがあり、占拠の主導者たちは
停退学処分とかもなく、同じ組に集められた。
1時間目に、私はその組の学級委員に選ばれたが、
同時に”生徒の要求による以外のホームルーム廃止”も決議された。
な、なんですか、それ??
いいけどさ、、べつに。

その年の正月、担任から年賀状がきた。
「君もいろいろたいへんだと思いますが、よろしく頼みます」
先生のほうから年賀状だなんて、あとにも先にもこの時だけだ。
返事は・・・出さずじまいだった。

そんな時代ですよ?
でも、かのプリンセス雅子さまの姉妹校の出身であるA子には、
まったく違う時間が流れていたのだろうか?
そうえいば、ダンナとしりあったのは、テニスコートだとかいうし。

あ、で、ぐだぐだ鑑賞会のほうですがーーー。
開始からすでに7時間、女4人で4本目のワインがあくころには、
雲行きがあやしくなっていた。
「こんなもん、3か月ももたないのよ」
かなりロレツのあやしくなったA子が、テレビを指さす。
収録から3か月。
番組の最後に夫からの手紙が朗読され、
一時はラブラブだったらしいのだが・・・。
「みんな、好き勝手にやればいいのよ」
おりしも、この日は三連休前夜だった。
夫も娘も、それぞれ予定があり、帰らない。
「わたしだけ、なんにもないのよ、なんにも!」
「いいじゃん、わたしもなんもないよ」
「あたしなんか仕事だよ?」
「違うの、私が言いたいのはそんなことじゃないの」
A子が机につっぷす。
気がつけば、BGMには、なぜか森進一が!
いや、『襟裳岬』も『冬のリビエラ』も大好きだけど。
でも、今、このタイミングで森進一はないでしょう?!
「ねぇ、めっちゃ、場末の居酒屋感ただよっちゃってるんですけど」
「曲かえようよ」
「なんかほかにないの?ボザノバとかジャズとかさ」
「いいよ、森進一以外なら!」
って、別に、ほんと、森進一にはなんの罪もないんですけど・・・。

山あり谷あり。
長い夫婦生活で、別れたいと思ったこともあるけれど、
去年の震災で、変わった。
「ともかく、そこに、このひとがいてくれるだけでいいと思ったの」
そう感謝していたはずなのに。

やっぱり、そばにいるだけじゃダメってことか??
下手にテレビ出演や夫からのラブレタ―朗読なんて
お派手なイベントがあったばっかりに、
その後のなんでもない暮らしが色あせてしまったのだろうか?

火の粉は現在就活真っ最中の一人娘にも飛び火した。
「あの子だって、上海だろうがムンバイだろうがリオだろうが、
どこでもいきゃぁいいのよ」
??どこでもってわりには、ずいぶん具体的ってか、限定的じゃない?
「何、それ?上海だのみムンバイって、そんな話あんの?」
「ないわよ~~っ。ブリックスってだけよ」
・・・あぁ、ブラジル、ロシア、インド、・・・って、これから発展する
勢いのある国のことね。
酔っぱらってブースカ言ってる時でも、ちょこっと、なんかかっちょいいとこ
えらんじゃってるのが、親心というかなんというか・・・。
さすが、一流大学の人気学部にいってるだけのことはあるわけね・・・・。

ちなみに、この日の4人のうちわけはというと・・・既婚&子1、
バツ1&子2、 未婚2 。
ま、女4人で子ども3人なら、よしとしてもらうか・・・って、どういうこと?(~~)

ところで。
この家には、ソファやピアノの上、いたるところに
彼女のしあげたパッチワーク作品がかけられていた。

「だいたいね、森進一なんか聞きながら、
ちくちくお針なんかしてるからいけないのよ」
口の悪いTが、いきなり言う。
「そうだよ。だいたい、うつむいて、そんなちまちまやるの、
A子に会ってないよ、全然」
「そうなの~~~~っ!!」
突如、ガバッ、A子が身を起こす。
「でしょう??なんで私、こんなことやってんのおぉ??」
「だよぉ。不思議だったんだ。お教室でもひらくんならともかく。
タダの趣味でこんなこと、全然にあわないよ」
「そうよね!…辞める。わたし、もうやめる、パッチワークなんて
もう、今日からやめるっ」
「そうだそうだ!
ダンナや娘の帰り待ちながら、こんなことやってたら、
暗くなってあたりまえだっつううのっ!」
A子が、辞める宣言をしても、なお、3人の反対大合唱はつづくのだった・・・。
考えたら、パッチワークにも、罪はないのにね・・・・。

楽しいことには目がなくて、スキーもテニスもすぐうまくなって
なんでもスイスイ、涼しい顔してマスター。
モーターショーの女子大生コンパニオンのはしりで、
宇宙的なコスチュームに身を包み、華やかな会場で
笑顔をふりまく彼女を見に、晴海に行った日から幾星霜。

「帰らないで」
それが、本気だとわかったので、私たちは席をたつことができなかった。

それから、しばらく、泣いたり、転んだり、コップひっくりかえしたり、
居眠りしだした彼女につきあい、後片付けなんかも適当にして、
タクシーを呼んだのは、9時もまわったころだったろうか。

「大丈夫かね?」
「大丈夫でしょう」
「うん」
「だよ」
そんな会話を交わしながら、タクシーにゆられてるうち、
ふと、頭をよぎった。
私が女友達と会ってくるたびに、母が聞く一言。
“あんたたちのなかで、だれが一番幸せ?”

私は毎回、それを聞くたび、激怒してしまう。
“それぞれです!!
順位なんかつけられないのっ!!つける必要もないんです!”

なんで、あぁ頭にくるのか、自分でもちょっと謎だったけど。
少しわかった気がする。

幸せなんてもんは、本当にそれぞれちがっていて、
一概に言えることはなにもないのに、
母が無理に世間一般の常識では・・・・みたいな価値観で
はかろうとすること自体に、わたしはおおいなる異議を唱えたかったのだ、と。

だてにも悩みはあるし、感情はいろいろに動く。
その場その場で状況も違う。
“勝手にきめつけないでよ!!”と、わたしは言いたいのだ。

翌朝、A子からは、短いメールがきた。
「いやはや、昨日は失礼。
久しぶりに飲みすぎました。
片づけ、ありがとう。
今度は楽しく飲もうね」

パッチワークをやめたかどうかは知らない。
森進一のCDを捨てたかどうかも。
(いっそ、捨てちゃえ!!
でないと、つい聞いちゃうぞ!!と、みんなで脅したのだった。
ごめんね、進一!)

でも、一斉メールで、わたしたちは互いに「またね!」と、
元気に会う約束をしたのだった。

しかし、心情を吐露する姿って、久しぶりに見た気がするなぁ。
なんだか、それがとても心に残ってる。

A子は翌朝、少し恥ずかしかったかもしれないが、
友達は誰もそれをからかったりしない。
いや、からかいはしても、バカにはしていない。

もう10年も20年も前、テレビのバラエティで
幼稚園児がマイクの前で好きな男の子に告白した。
が、男の子はほかに好きな子がいると答えた、
え~~~~っ!!
ただでさえ、ショックなのに、男の子は、その好きな子を
カメラ前に呼んでくる。
呼ばれてきた女児と男児は、幼いながらになんだかいちゃいちゃしている!
うそ~~~っ。
ふられた女児は、床に転がって、身をよじりながら、さけんだ。
「だぁ~~~~っ!!」

まぁ、それはもう本当にみもふたもない嘆きようというか、
あまりに正直な感情のはきだしかたで、わたしは大笑いしながら
なんだかちょっと感動もしていたのだった。

未婚で子供もいない私は、ときどき、びっくりする。
初めてあった子どものあまりのむきだし(?)ぶりに。
例えば、なにかで一人の子をほめる。
「あら、えらいわねェ。わぁ、上手」
すると、必ず、もう一人が、自分もほめられようとうする。
「ぼくだって。できるよ」
で、きまって言う。
「みてみて、ほら」

「ね、ママ、見てみて」
大昔、親せきの子が、一生懸命いってるのに、母親が他人と
話中だった時のこと。
その子がいきなりかけよって、両手で母親の頬をはさむと、強引に顔を向かせた。
「見てっていってるでしょ!!」

唐突に思う。
あんなふうに真剣に、素直に、感情を伝えたこと、
大人になってからあったろうか、私?

いくつかの恋の場面で、あんなふうにむきだしのまま、
心をと伝えることができたなら。
なにかが変わっていたろうか?

あとわずかで、師走。

お酒を飲む機会も増えるけれど、果て、心情は吐露できるのか?
そも、吐露したいほどの心情などあるのか?

1年をふりかえりながら、ちと苦い思いなどもしそうな冬の夜です。

作家
: 正本ノン
プロフィール
   
星座
: 水瓶座
血液型
: A 型

診療時間

診療時間表

休診日
第2・第4・第5土曜日、日曜日、祝日

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〒047-0032
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