世良心療内科クリニック

小樽市の心療内科、精神科 世良心療内科クリニック

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コラム

baby step

みつあみ

朝7時15分。
ラッシュのはじまる山手線。
始発側のホームで次の電車を待って並んでいると、
こぎれいな身なりの女性がひとり、列じゃない場所にたたずんでいた。
横入りする気か?と若干けん制ぎみに、ちら見して列に並ぶ人々のかたわらで、
彼女はどこかひっそりした空気を身にまとい、前方をみやっていた。
謎は、じき、とけた。
目の前の電車が発車する寸前、彼女は胸のあたりで小さく手をふった。
声には出さなかったが、”いってらっしゃい”と、唇がうごいた。

幼い少女が、電車の中から手を振るのが見えた。
学校に通う子供の見送りにきていたのだ。
娘を見送ると、彼女は静かに踵をかえし、エスカレーターのむこうに消えていった。

数日して、同じ時刻、運よく座れて発車をまっていると
可愛らしいセーラー服姿の女の子が乗ってきて、扉のすぐわきに立った。
先日の若い母親が、ホームの向こうから、身をのりだし、なにごとか少女に伝えた。
少女がこくりとうなずくまもなく、扉が閉まった。
ドアの向こうで、彼女がやや心もとなげに小さく手をふるのが見えた。

あの美しい母親は、毎朝、こうして幼い娘をホームまで送り、
無事乗るのを見届けてから、一日をはじめるのだろうか。
(入場券の定期ってあるの?)

1年生と思しき少女は、次の目白駅でおりるまで、ずっと、扉のむこうに目をむけたままだった
襟に赤いラインのはいった紺色のセーラー服は、いかにも名門私立といったふうで、
少女の三つ編みによく似あっていた。

子どものころ、みつあみは、たいてい、お母さんが結んでくれる。
朝、忙しいときなんか、お母さんは、よく小言を言いながら、髪をとかしてくれたもんだ。
「だから、早く起きなさいって言ったでしょ、ほら、頭動かさないっ!曲がるっ!」
でも、子供ってやつは、なんでか髪を結んでもらってる間も、じっとしていることができない。
・・・・それって、わたしだけ?
いや、そんなはずないな。
女子なら、必ず、同じ記憶があるはず。

昔のゴムひもは、輪っかじゃなくて、文字通りヒモだった。
よく、おかあさんは、片手で髪の束をつかむと、黒いゴムひものはしを唇でくわえ、
もう片方の手でそいつをきゅっとひっぱり、ぐるぐるキュキュッと巻いて結んでくれた。

あぁ、思いだす。
今はすっかりボケくさって、死ぬほど濃いみそ汁をつくっては、
わたしにがみがみ言われてる母が、
冬の日差しでぼんわりあたたかくなった縁側にわたしをすわらせ、
髪を大きな櫛でていねいにとかしてくれていた日々があったこと。
わたしは早く遊びにいきたくて、もういいよと、途中で腰を浮かしかけては、
「いいから、じっとして」と、髪をひっぱられて、
「あいたたたっ」と悲鳴をあげては
「もう、おおげさなんだからっ」と、さらにきゅっ、とやられるのが、常だったこと。

手塩にかける・・・って言い方、今どき、まるっきり耳にはしないが、
あのちょっと心細げに手を振っていた母親は、
お嬢ちゃんを手塩にかけて育ててるんだなぁ、今、まさに。

そして、はるか半世紀前のわたしも、
けっこう手塩にかけられていたのかも・・・・。

すっかり忘れていたけれど。

そういえば、子どものころ、わたしがもっていたお人形は、なぜか金髪だったりした。
その髪を小さな櫛でときながら
「さぁ、きれいにしてあげまちゅよ」とかいいながら、よく三つ編みをむすんでは、
ガサガサこんがらがって、どうにもひどいことになって、
頭にきてはさみで切ってしまった・・・。
ね、あるでしょ?
あれ、何が悲しいって、お人形さんの髪って、ミシンで渦巻き状に
がが~~ッと植えられてるのが、白日のもとにさらされてしまうんですよね。
わたしのかわいいお人形さんが、なんかもはや、ニセモノであったかのような、
しらじらしい思いとでも申しましょうか・・・。

普通のお人形は、ミルク(って水かだけど)を飲ませると、すぐおしっこをした。
あれも、なんか、仕方ないとはいえ、ちょっと悲しい気がした。

そんなある日、父が出張ででかけた東京から、すてきなお土産を買ってきてくれた。
ふつうの人形かと思いきや、な、なんと、その子は、ミルクを飲ませると
少ししてから泣くのであった!
両の目から大粒の涙を流すのだ!!!
おしっこじゃなくて!!!

もうそりゃぁ画期的なんてもんじゃない。
わたしは自慢で自慢で。
その夜、さっそく銭湯にその子を持って行った。
濡れたらかわいそうなので、自分の脱いだ服のなかにていねいにしまい、風呂かごにいれた。

お風呂からあがると、もののみごとに、お人形は消え失せていた。
だれが持っていったのか?
可愛い涙を流す三つ編み人形は、一晩でわたしのもとから消え失せた。
だれかのもとで、あの子は、宝物みたいに大切にされたろうか?

三つ編みは、簡単そうにみえるけど、意外やむずかしい。
自分で結ぶと、どっちかが必ず変てこにはねてしまう。
昔、それを逆手にとって、先っぽがぴょこんとはねた三つ編みで人気になったタレントがいた。
五月女まりって、言ったかな。
素っ頓狂な声で、目をくるくるっとするのが、可愛いと当時は評判だった。
わたしたちは、いったい、どうしたら、あんなふうに髪がはねるんだろう、
わざとらしいよね、とか噂しあった。
ワイヤーが入ってだだけなんだろうけれど、
そんなことも不思議に思うくらい、昭和のこどもと言うのは、アホだった。
ってか、純だった?
いや、単に情報量の違いかな。

小学校低学年のころのわたしは、
世界には日本とアメリカくらいしかないと思ってた、たぶん。
アリババのお話が好きだったので、バグダットという都に憧れていたが、
それが外国とは知らなかった。

私のお気にいりは、ご主人様の危機を機転ですくう召使いのモルジアナ。
盗賊が扉につけた目印にいちはやく気づいて、
同じ記号をそこらじゅうの家の扉に描いて、被害を免れたり、
ちょこっとした機転で無事乗り切っていくのが、すごく楽しかった、
かっこいいよなあ。

そっか、こどものころから、気の利く女にあこがれてたのね、わたしってば。
長じて、というか、人生一巡りした今でも、
気はそこそこきくけど、ちょい先走りで空回りの感もあるわたしだけど、
なるほど、原点はこんなところにあったのか。
今、思い当たった(へへ)!

千夜一夜では、異国からの使者たちが、
王様へのみつぎ物をささげもって行列するシーンも好きだった!!
金貨を何万ダカットだか山盛りにしたお盆や、
宝石をてんこもりにしたお盆をもった、
ベール姿の女召使いたちの挿絵も、めちゃくちゃエキゾチックだった。

ダイヤモンドにエメラルド、ルビー、サファイア、針水晶。
あまたの宝石の響きにも、わくわくした。

今年、法事でお坊さんがあげてるお経を聞いていて、はたと気づいた。
金銀瑠璃玻り硨磲赤珠瑪瑙・・・
たぶん、極楽浄土がどんなに貴く荘厳なものであるかを形容すべく、
宝石の名前がずらずら出てくるのだ。しかも、繰り返し。

貢物や宝石、だいぶ違うけど、
その昔、六花亭のパンフレットに凝っていたことがある。
毎日眺めては、次の旅行ではどのお菓子をお土産にしよう、
これはどんな味だろう??とか迷うだけで、楽しかった。

まだ、通販だのお取り寄せだの、影もなかったころ。

わたしの北海道旅行のお楽しみのひとつは、
まだ帯広の一地方銘菓でしかなかった六花亭のお菓子を買って帰ることだったのだ。

“お菓子はこどものお小遣いで買えなくてはいけない”って、
社長のモットーも納得の値段も、うれしかった。
なかでも、らんらん納豆という甘納豆はおいしくて、
最後の一袋はもったいなくて、ずっと大切にとっておいた。
いざ食べようと思ったときには、むれてダメになっているとも知らず・・・・・。

そう、賞味期限なんて表記のない時代があったのです!

製造年月日くらいはあったかな?
人々は、それからてきとうに判断して、
匂いを嗅いだり、ちょこっとなめてみたりして、
くさってないか、それぞれ勝手に判断して食べていたのです。

なつかしいな。

らんらん納豆はまことに残念なことになったが
(それ以来、買いすぎないということを覚えた!)、
わたし、きらいじゃないな、そういうの。

知り合いの砂糖卸しが言っていた。
砂糖なんてくさるもんじゃないからさ、本来、賞味期限なんていらないんだよ。
けど、万万が一なにかあったら怖いからさ、そりゃ、つけるけどさ。

その知人の話にはおおいに納得したけれど。

最近ぼろぼろでてくる高級ホテルの食材偽装は、いただけない。
全くもって。
あれが偽装でなくて、なんなんだろう?
日本語って、いかようにもごまかしのきく言葉のような気がしてきて、
面妖なんてもんじゃない。

信用は気づくのに時間がかかるけど、崩れるときは一瞬だって、本当だ・・・・。

私も肝に銘じなくちゃ。

要は、人もものも、手をかけ、育んでいくものだって、こと?

目をあげれば、澄んだ青空には、はけではいたような白い雲が。
美しい秋。

世界一幸せとか、そんなんじゃなくて、なにかちょこっと、いいことがありますように。

作家
: 正本ノン
プロフィール
   
星座
: 水瓶座
血液型
: A 型

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第2・第4・第5土曜日、日曜日、祝日

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