世良心療内科クリニック

小樽市の心療内科、精神科 世良心療内科クリニック

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コラム

baby step

ため息を深呼吸にかえて

このところ、東京ではお江戸日本橋がにぎわいをみせている。

2020年のオリンピックまでには往時の人気をとりもどそうと、

お祭りやらイベントも盛りだくさん。

 

野村証券のビルのたもとからは、小さな船が出ていて、隅田川を周遊なんて風流なこともやっている。

水路は東京オリンピックの際に突貫工事で作った高速道路で頭上をほぼ覆われていて、

あらら風流はいずこに?

が、大川=隅田川に出ると急に空があらわれ、

視界がひらけ、同時に揺れも強くなると、

客たちはOh!といっせいに声をあげる。

右へ左へとななめと揺られながら、波ごしに見るスカイツリーは、

モダンでいかにも“今”なんだけど

なんだか北斎の波間からの富士山とす~~っとだぶって、

いきなり江戸時代と地続きになった気がした。

なるほど、日本橋があらためて注目されるわけだわ。。

 

して、こたびは(ほほ、江戸風に気どってみました)市川海老蔵主催の『和の世界』へと行ってまいりました。

海老蔵の肝いりで、仕舞や落語、舞踊に歌舞伎の一幕と、

ちょこっとずつ幕ノ内弁当みたいに集めた1時間半。しめて8500円なり。

・・・あ、すんません、

私は知りあいからまわってきたチケットですゆえ、タダでした・・・。

そう、実は、かの当代きっての人気者・海老蔵をもってしても、この不況のご時世では席が埋まりきらないらしく、

関係者からこの高価なチケットを10枚近くもいただいてしまったのでありました。

みんなに声をかけたら、喜ぶ喜ぶ。

しかも、私の席はチョイ右よりだけど、なんと前から2列目!

もちろん、さっさと自分が一番いい席をとった私(~_~;)

うひゃひゃ、ラッキーとはしゃいでいると

「あんたってホント人生ついてるわね」

と、母が感心する。

「あのさぁ、たまたま高いチケット手に入ったからってさ。

人生までついてるってオーバーすぎだよ」

と、笑うと、

「そんなことないわよ。どんだけ友達にめぐまれてると思ってるの。いないよ?いまどき、お米送ってくれたりする友達。親せきでもないのに」

と、力説した。

「感謝しないとバチあたるから!」

た、た、たしかに!

そう、なんと、私にはさくらんぼだのグリーンアスパラだの北の大地から季節の名産を送ってくれるありがたい友人がいるのだった!

し、して、この間はななんとゆめぴりかまで送ってくれちゃって。

もう感謝なんてもんじゃないのでありました。ヽ(^o^)丿

お米って、やっぱインパクトあるわぁ。

生活=命に直結してる感じがするからだろうか?

 

それはさておき。

当日の劇場はというと、ざっと8割の入りというところ。

600名ほどの定員ながら、端っこには空席がちらほら。

入り口にはマスコミ関係者、出演者関係なんて机が出ていたから、たぶん、招待券はほかにも出てたんじゃないかなぁ・・・。

いや、なにも、海老蔵にケチをつけようっていうんじゃないんです。

タダでいい思いさせてもらって、批判なんてとんでもない。

ただ、不況風が身にしみたというか、

テレビとかバラエティ番組を見てる限りじゃ、

新しい店にはすぐ行列ができて、

消費税値上げのあとも高級時計はバンバン売れて、

宝石店も好調で・・・・なんて聞くと、

いったい本当にそれ同じ日本の話ですかって?気がして、

つねづねひっかかってたもんで。

 

だって、コンビニに勤めてる友達は、

不景気まっしぐらだよと、断言してた。

「前なら、カゴに2つ3つ放りこんでたお客さんが、今はほとんど単品買いになったもん。

いつも普通に煙草とコーヒーとパン買ってたお客さんが、

煙草じっと見て、やめてパンとコーヒーだけで帰るとかさ。

景気悪くなってないなんて、ウソだよ」

そして、逗子の海から4分ほど離れた川沿いにある彼女のコンビニは、

せんだっての9月をもってついに閉店とあいなった。

微妙に売り上げが落ちてきたところに持ってきて、

海からすぐの場所にライバル店ができたのが、

決定打になったらしい。

 

サラリーマンおやじたちの聖地として

よく街頭インタビューの場になってる新橋駅前に

新しくオープンする老舗ビアハウスのスタッフに採用された別の友人は、

「そこそこ時給はいいけど、人が集まらないんだよね。

けっこうきついからさ、仕事」

とぼやいていたが、ななんと開店10日目にして、辞めてしまった。

「だってさ、人出不足だからって、上の人が中国人の知り合いに声かけたら、大挙しておしよせちゃって。

わたし、中国人に恨みは無いけど、彼らと仕事一緒にするのはイヤなんだよね。ってか、ムリ。

初めこそ少しは頭低くしてるけど、慣れたらすぐやりたい放題になるの目に見えてるからね。

今までどんだけやられたか。

そりゃわたしだって、せっかく見つけた仕事失いたくなかったけどさ。ムリだわぁぁ~~~っ」

赤坂や銀座の飲食店で厨房にたってきた彼女は、ため息をついた。

「あんな中国人だらけにするんだったら、ビヤホールなんかやめて中華レストランでもやればいいんだよ」

ん~~~。そうかぁ。

 

さて、で、海老蔵ですが。

実はとでもない事態が発生した。

開演は5時だったが、仕事でどうしても間にあいそうになかったので、母とは劇場で待ち合わせをした。

「だいじょうぶですよ。日本橋なんか目つぶってでもいけるわよ」

調子がいい時の母は、いつもこんなで、決してひかない。

「本当に大丈夫?ひとりで行ける?」

私が心配すると、不機嫌になる。

「なによ、お母さんがボケてるから、不安なの?ごじょうだんでしょ」

・・・・・・・。

賭けるような、祈るような気持ちで、その日、私は劇場に急いだ。

仕事も少し早めに切り上げさせてもらって、ぎりぎり三井ホールに駆けこんだ。

おりしも、開演の鐘がなっている。

すべての客はすで席についたのか、ロビーには誰一人としていない。

あせって場内の扉をあけようとしたら、まさにそのとき、中から扉があいて、ほかならぬわたしの母が係員につきそわれ出てきた。

「お母さん?!」

「あぁ、のりこ!」

母は私の顔を見るなり、おろおろ泣き出した。

「どうしたの?」

「バックがないの」

と母は震える手で私の腕をつかんだ。

「隣の人に、ちゃんと見ておいてくださいねっていったのに、知らないっていうのよ」

「そんなバカな・・・」

「ううん、ほんとなのよ。ちょっとトイレにいってるからおねがいしますって頼んだのに・・・」

「ええ~っ、ほんと?バッグ置いて席たたないでしょ、フツー」

「でも、本当なのよ・・・・」

あぁ・・・。“来たのだ”と思った。

ついに”その時“がきたのだ。

認知症の症状の一つにあるという“詐話”が、これなんだワ、きっと。

劇場のスタッフが何人か、遠巻きにわたしたち親子を見ている。

あぁあ・・・ボケてるんだな・・・という同情めいた視線が、なんともバツ悪かった。

「トイレとかお探ししてみたんですが・・・」

と、係員が横から申し訳なげにわたしを見やる。

「あ、ありがとうございます。またあとで、お願いしますんで」

母を抱くようにして、私はとりあえず場内に入った。「あとは係りの人がちゃんとさがしてくれるから、大丈夫だって。それよかせっかくだから、見よう?」

照明の落ちたなか、足下をスタッフに照らしてもらい席につくと、すぐに、幕があがった。

 

仕舞いといって、まずは袴姿の謡いの人がひとさし舞った。

シンプルな舞台に金色の扇が美しい。

雰囲気たっぷり。

だが、母は舞台を見ようともせず、ずっとうつむきっぱなしで涙ぐんでいた。

「おかあさん、大丈夫だから。ほら、見てみ?きれいだよ?」

耳元でささやいても、首をふるばかり。

「だって、となりの人がみてくれるっていったのに・・・」

と、唇をかむ。

「わかったから、大丈夫だから」

どれだけ、大丈夫とくりかえしただろう。

が、母の涙がおさまることはなかった。

「どうしよう、ワタシ、バカになったんだ・・・どうしよう」

幸い、ものの10数分で最初の出し物は終わり、急いでロビーに出ると、係員がバッグ片手に待ち受けていた。

「よかったですね、見つかって!」

 

実は、内心、私もひどく案じていた。

確か、カードや保険証も灰いているはずだったから。

さぁ、これでやっと楽しめるぞ!

が、海老蔵の『平家物語』の朗読が始まっても、母はまださめざめと泣いていた。

「ちょっと、周りの人が変に思うでしょ?バッグあったんだからもういいじゃない?忘れなよ?」

と言っても、母はうなだれ首をふるばかりだった。

ん?けど、なにやらもぞもぞしているぞ?

「なに、おかあさん、お財布のなかみ、確かめてんの?すごいね。泣きながらもお金確かめる余裕はあるんだ?」

からかうように言うと、母はこくりうなずき、淚ながら少し笑った。

「さすがだね。感心するわ」

と、肘でつつくと

「あたりまえですよ・・・」

と、肘をおしかえしてきた。

 

一回笑うと、少しましになったが、今度は安心したらトイレに行きたくなったといいだし、結局、中座する羽目になった。

それでも、最後の演目で海老蔵が見得を切るころには、大きな声をたてて笑い、盛大に拍手した、

「あぁ、楽しかったわね。やっぱりいいもんだわね、舞台も」

芝居が終わり、外へ出ることには、もうバッグのバの字もいいださなかった。

「この下に確かおいしいお寿司屋さんあったわよね。なんか食べてこうか?」

そう言ったのは母だった。

 

「今泣いたカラスがもう笑った、だね」

そうからかうと、母はきょとんとした。

どうやら、ほんの1時間前までめそめそ泣いていたことを忘れてしまったらしい・・・。

一瞬ぞっとした。

怖い・・・・。

こんなにも忘れちゃうもんなの??

 

「海老蔵、楽しかったわね」

翌朝、母は満足そうに言い、バッグの件には一切触れなかった。

結局、母の記憶のなかでは、それは完璧に消去されたのだった。

イヤな思いをひきずるより、ずっと良いことやもしれぬ。

でも、なんだか悲しい気もする・・・。

 

あれから、母の記憶はさらにどんどんもたなくなってきている。

これからどうなるのかと思うと、不安でドキドキする。

だが、どうにか折り合いをつけながら、いくしかないんだろうなあ、きっと。

ふう~~~っ。

深呼吸深呼吸。

 

秋の日は釣瓶落とし。

なんて思っていたら、あっというまにもう冬。

クリスマスももうすぐ。

そして年の瀬も。

 

これまでアハハおほほと呑気にこれたのは、運がよかったからなのね。

人として胆力をためされるのは、これからなのね。なるほど・・・。

うむ。

なんか、自分だけが大変な気がしてるけど、実はみんな経験してることなんだもんなぁ。

自らの老いも親の老いも、もろもろのできごとも。

生命の営みって、そういうことなんだよね?

ん、これって『フレディの葉っぱ』か?(へへ)

 

まぁいいや。

さあ、ここはひとつ深呼吸でもして、前をむいていきますか。

気がつけば、新しい年ももうほんとすぐそこまで。

 

実は毎年、年の瀬になると同じ言葉、思い出すんですよね。

「笑うと、少なくとも笑ったような気分になるからね」

って、SF作家カード・ボネガットの。

脳は意外とバカでだまされやすいから、ウソ笑いでもホントに笑ったのと同じ幸せホルモンが分泌されるんだって。

以前はなるほどぉと思っててたけど。いや、

♪もしかしてだけど、もしかしてだけど、脳って本当に賢いんじゃない?

だから辛くても笑うと楽しいように錯覚させて、私たちを助けてくれてるんじゃないのォ?

そういうことだろっ♪

どうでしょ?、

 

今年も1年、本当にいろいろ事件も事故も災害も山のようにあって、世界もそこらじゅう混乱してるけど。

来たる年が、つつがなく善きものでありますよう。

いいことがちょこっとありますよう。

あなたに、世界に、そして、わたしにも。

深呼吸。

そして、スマイル スマ~イル!

明日をよろしく♡

作家
: 正本ノン
プロフィール
   
星座
: 水瓶座
血液型
: A 型

診療時間

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休診日
第2・第4・第5土曜日、日曜日、祝日

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